本好きの下剋上(ルッツ/マイン)
今日はいい天気だ。
最近私はまた熱を出してしまって寝込んでいた。
でも1日だけ。
1日で熱が下がるなんて、私ったら成長してるんじゃない?
1日だけなのに久しぶりに外へ出た気がする。
そんな日にこんなに晴れてるなんて…
お日様がきらきらしていて、リンシャンで綺麗にした私の髪が虹みたいに輝いている。
とっても温かくって、絶好の紙作り日和!
なんだけど…
ルッツと一緒に森へ行こうと思って気合いを入れた瞬間、若干ふらっとした。
大丈夫…だよね?多分。
言わなければ、ルッツにもバレないだろうし。
うん!
よし、行こう!レッツ紙作り!
ルッツは家の前までに迎えに来てくれた。
いつもより頭がぐらぐらする気がするけど、今日作らないと晴れの日はないかもしれない…なんて考えてしまう。
今日の私は頭が回らなかった。
ルッツと話してる時もあんまり会話が頭に入ってこなくて、私は上手い具合に笑って誤魔化していた。だけど
ルッツも伊達にマイン係をやってるわけじゃない。すぐ気付かれた。
「今日のお前、ちょっと変だぞ?熱でもあるのか?」
ルッツは私のおでこに手を当てようとしたけど、上手く避けた。
「だ、大丈夫だよルッツ。今日は私、体調良いんだから。」
ルッツはちょっと眉をひそめて心配そうに私を見た。
「そうか?体調悪くなったら、すぐ言うんだぞ、わかったな?」
「うん…。」
もう、ルッツは過保護なんだから…。
すぐ私のことを子供扱いして!…ばか。
同い年とは思えないくらい、ルッツと私の背は違うし、力も敵わない。
あの目にはなんでも見透かされてるような気もする。
ルッツにはいっつも勝てない。
今日ばっかりは、ルッツにバレないように紙作り成功させるんだ!
私が蒸し器を見ていて、ルッツは薪を取りに行った時、やっと1人になれてちょっとホッとした。
私を1人にするところを見るにバレてないみたい。
良かったあ…。
やっと熱が下がったのに、また家に閉じ込められて紙が作れないなんて我慢できないもんね。
頭がふらふらしてちょっとテンションが上がっていた私は、鼻歌を歌いながら椅子に座って、足をぶらぶらしていた。
そうしたらルッツが帰って来るのが見えた。
「おーい!ルッツー!」
ルッツに手を振ろうと立ち上がった瞬間、
私は熱い蒸し器の上に身を被せそうになった
「危ない!」
だけど…あれ?ルッツ後ろにいたの?
私はルッツに脇を持って抱えあげられていて、肢体を宙に浮かべていた。
恐る恐るルッツの方に顔を向けると、ルッツは顔を鬼みたいにしていた。
怖いよ?ルッツ?
「今日は家に帰ろうか、マイン。」
ルッツがにっこり笑っていうから、私はちょっと怖くなってしまって、
「紙作りしたい…。作りかけだし、私は大丈夫だから、ね?」
なんてワガママを言った。
ルッツは静かに火を消して、私を手早く背負って言った。
「絶対ダメだ。幻覚を見るほど熱があるのに無理をするって言うなら、本当に怒るぞ。」
だって、だってルッツ…。
言い訳をしようと口を開きかけたけど、ルッツは私の罪悪感をうまく刺激してくる。
「ごめんな。俺がお前の体調管理できなかったからだよな。次はちゃんと確認するからさ。」
そんなこと言われたら、嘘ついた私はどれだけルッツに謝らなくちゃいけないんだろう…。
気が付いたらルッツに家までおぶられてベッドに寝かされていた。
そこで私は朦朧とした意識の中、母さんとの悪魔のような会話を聞いた気がした。
「いっつもごめんね、ルッツ。世話かけて…。」
「ううん、大丈夫だよ。でもマインってすぐ無茶するよな。どうにかなんないかな…。」
「それなら、ルッツから叱ってあげて。」
「俺から?」
「ルッツから言ってもらったら、絶対聞くと思うの。あんまりにも聞かないみたいなら、お尻ぺんぺんしたっていいのよ?」
目が覚めると、朝になっていた。
少し経つと母さんが来て、私の体調を確認するとにっこり笑って下に降りた。
私は、あの会話を思い出して起きたくなくて、ずっとベッドでうだうだしていた。
そうしたら扉を開ける音がして、私はびくっと肩を震わせ布団に潜り込んだ。
「マイーン!来たぞ。体調はどうだ?」
私はルッツの顔を見たくなくて、また嘘をついた。
「ちょっと、頭が、痛くて…話せないかもしれな…」
私が言い終わる前に、ルッツは布団を剥ぎ取ってしまった。
「さっきお前の母さんに、熱は下がったって聞いたけど?」
ルッツは私の上から、黒い笑みを浮かべて言い放った。
「で、マイン?全部話してもらうぞ?」
私は頬をひきつらせて、笑った。
「ねえ、これ話し合いの体勢じゃないよ?」
「だめ、逃げるじゃないか。」
私はルッツの膝の上で暴れていた。
あの会話のとおりにお仕置きされるのかと考えて、落ち込んだ。
母さんや父さんならともかく、ルッツにお尻を叩かれるのはやだ。
恥ずかしすぎる!
「マイン、俺に嘘ついたよな?」
パン!
やっぱり話し合いなんかじゃないよ!
ルッツのばかあ!
「嘘ついたこと、全部言えよ」
バシッ!
「あっ…」
バシッ! バシッ!
「うっ…さいしょ…からぁ…」
バシッッ!
「体調悪かったぁぁ!」
バシッ!
「ふぅん、最初から嘘ついてたんだな」
ルッツは私のスカートをまくって、下着を露にした。
私は恥ずかしくて耳まで熱くなった。
嫁入り前の女子にこんなことするなんて…ルッツの、あほ!
バシッ! バシッッ!
「ふぁ…やだぁ!うう…」
「やめるわけないだろ。マイン、反省してないだろ。」
バシッッ! バシッ!
「ちがうの!反省してるよ!ね?」
パンッッ!
「やだやだぁ!反省してるからあ!」
バシッッ!
「尻叩かれるのがいやで言った言葉なんて信じられないなあ」
ルッツは、私の下着すら下ろして絶対赤くなってるお尻を丸裸にした。
バシッ!
「ふっ…うぇ……いじわるう!」
バシッバシッ!
「ほら、嘘ついたこと全部言うまで終わらないぞ?マイン。」
バシッッッ!
「ぁあっ!体調悪いって…言った……。」
バシッ!バシッ!
「それは良いこと?悪いこと?」
「ふぁ…うっ…悪い、こと!」
バシッ!バシッッ!
「じゃあ次はしないようにしような。」
バシッッ!
「うわぁぁん!ルッツもう終わりい!」
パシッ!バシッ!
「まだ、反省しなきゃいけないことがあるよな。」
バシッッ!
まだあるの!?えーっとえーっと…
「うっ…えっと、ルッツに、迷惑かけちゃった…」
バシッッッ!
「うぇぇん!やだぁ、いたいぃ!」
ルッツがいきなり強く叩くから、私の自制心とか大人の威厳とかそんなものが全部吹き飛んで泣いてしまった。
「ごめん。ちょっと強くしすぎたな…。でもマイン、俺はお前のことを迷惑だと感じたことはない。でもな?いつも心配しているんだぞ。」
バチン!
「やぁ…痛いいたいぃ!うっ…ぐすっ」
「マインは体力がないんだから、無理しちゃだめだ。」
バシッッ!
「ふぇ…ルッツゥ…」
私がルッツに甘えたような声を出したら、ルッツは諦めたようなため息を漏らした。
パシッ!
「じゃあ最後に、ごめんなさいは?まだ出てないよな?」
パシッ!パシッ!
「ふぁあっ…!」
うう…私、大人なんだよ?なのに、なのに…。
「ご、め、ん、な、さ、い、は??」
バチンッ!
「いったぁ!ごめんなさいぃ!ごめんなさい…ふぇえ」
パチンッ!
「よしよし、痛かったな。」
「ルッツゥゥ!痛かった痛かったぁ!」
私はルッツの膝から解放された瞬間に、ルッツに抱きついた。
ルッツは私の頭を撫でて、抱きしめてくれた。
ルッツは良い子だって私をずっと撫でてくれたから、私は泣き疲れて寝てしまった。
「すぅ、すぅ…。」
「本当は心配かけた人の分、反省させたかったけどな…。マインは体力がないし、痛そうだからな。良く頑張ったな、マイン。」
また悪魔の囁きが聞こえたような気がするけど…勘違いだよね、ルッツ?